行政書士が入管法違反で逮捕されるという事案が発生いたしました。
同じ入管手続きを扱う専門職としてこのような事案が発生したことは誠に残念であります。
では今回の事案について詳しい内容と、このような場合の適切な手続きについて解説いたしました。
今回は別の在留資格を有する外国人を製造工場で派遣従業員として雇用する目的で虚偽の申請を行った事案です。
虚偽申請は入管法70条1項違反「在留資格等不正取得罪」に該当し、三年以下の懲役若しくは禁固若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁固及び罰金を併科すると定められています。
また、行政書士等がこのような申請を行った場合、入管法74条の6違反「営利目的在留資格等不正取得助長罪」に該当し、罰則は在留資格等不正取得罪と同じく、三年以下の懲役若しくは禁固若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁固及び罰金を併科すると定められています。
いずれも入管法上もっとも厳しい罰則となります。
では今回のような場合、どのような手続きを行うべきだったのでしょうか?
まずは、別の在留資格を取得していたのなら在留資格はそのままで努めることができる同種の就労先を探すのが賢明でした。
しかし、新型コロナ感染拡大の中で同種の就労先が見つからないことも考えられます。
では、次善策としてどのような手続きがあったのでしょうか?
別の業種の就労先であっても入管法の定める在留資格に該当しうる業種であれば、適切な在留資格変更許可申請を行うことで今回のようなことは防げたはずです。
本来であれば専門職である行政書士等が適切なアドバイスをすべきところですが、今回のような事案が発生したことは非常に残念です。
今回のように製造工場で派遣従業員として雇用したいといった場合には派遣元と派遣先双方が入管法に定める要件を満たしている必要があります。
また、製造工場での単純労働は原則として在留資格の要件を満たしません。
このような場合は、技能実習や特定技能といった在留資格への変更許可申請を行えます。
ただし、技能実習の場合は適切な実習計画等が必要ですし、特定技能の場合は生活支援等も必要になることから受入企業の負担感が増すことになり結果として今回のような事案が発生したものと推察されます。
行政書士は依頼者の権利利益を保護することがその職責ではありますが、同時に適切な行政手続きを円滑に行うことも職責であり、不正行為に関与した専門職の責任は非常に大きなものといえます。
当事務所では依頼者の権利利益を最大限に保護しつつ、一切の不正行為を排除し適切な行政手続きを円滑に遂行すべく日々の業務を行ってまいります。